墨付けは大工技量の集大成!棟梁たるゆえんです。墨付けとは、曲尺(さしがね)と墨糸(すみいと)または墨刺(すみさし)を用いて、梁や柱などの木材面に線や印を付けることです。棟梁の頭の中では、家の構造が立体的に理解されていなければなりません。立体としての家を頭に描きながら、仕口(柱・梁などの部材の接合部)をどのように納めるのか、想像しながら刻みの基準となる線を付けていきます。また、曲尺(さしがね)を使いこなすのも棟梁の技量です。曲尺は墨付けに用いるL字型の物差しで、線を引くだけでなく、加減剰余の図解計算や平方根・立方根の解法、長さ・面積・体積を求めることができる優れモノです。「誰の曲尺(さしがね)だ?」建て方(たてかた)前に刻んでおいた部材を組み上げていって合わない場合「これは誰の曲尺だ。どういう寸法か?」から発展して、「どういう魂胆か」という意味で使われています。写真は、棟梁が加工場で墨付けをしているところです。近年はプレカット工法と呼ばれる、コンピュータ制御による自動機械加工の波に押されています。熟練技の伝承が途絶えてしまうことは、非常に寂しい限りです。ちなみに写真の木材は、山形県を代表する銘木金山杉(かねやますぎ)です。